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血液検査をする意味とは

[2023.02.15]

~定期的な血液検査のススメ~

 

血液検査の目的とメリット

 

血液検査といっても、病気になった時と健康な時に行うものでは意味合いが変わってきます。病気の時に血液検査を行うのはなんとなく理解できると思いますが、病気でないときに行う理由はよく分からないという方もいるのではないでしょうか。
ではなぜ普段から血液検査が大事なのか、その必要性について解説します。

意外と低い!健診の受診率

厚生労働省のデータによると、特定健康診査(1)の受診率は53.4%と約半数であり、特定保健指導(2)の実施率は23.0%とかなり低いことがわかっています。
つまり、国民の約半数は自分の健康状態を把握しておらず、生活習慣の改善が必要な方の約3/4はそのまま放置しているということです。

生活習慣病である高血圧や糖尿病などは、初期段階では症状まったくないことが多く、症状があっても少しずつゆっくりと現れてくるため、自分では気が付きにくいものです。
しかし、症状がないからといって油断していると、これが脳梗塞や心筋梗塞などの命に直結する怖い病気につながる恐れがあります。
(1)問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などいわゆる健康診断のこと
(2)健診で異常が指摘され、生活習慣の改善が必要な方に行われる保健指導

 

予防のために

 

血液検査では肝機能や腎機能、脂質、糖尿病の数値などが測定されます。
いずれも軽度の異常であれば症状がないことがほとんどであり、検査しない限り気づくことは稀です。
例えば糖尿病では口が乾いたり、目が見えにくくなったり、手や足の指先がしびれるなどの症状がでてくることがあります。
こういった症状が出てきたときにはかなり進行している場合が多く、適切に治療を行ってもなかなか改善しにくいものです。
さらには、脳梗塞や心筋梗塞などの命にかかわるような病気のリスクも上昇するため、予防が非常に重要になってきます。

糖尿病の数値が正常でも年々上昇傾向にあるようなら、『間食を減らしてみよう』や『一駅前で降りて歩いてみよう』など、食生活を改善したり運動習慣を見直したりする機会になります。

早期発見、早期治療


何か症状が出る前に血液検査で早期発見できれば、速やかに治療に移ることで通院や治療の負担を減らしたり、がんなどの怖い病気に備えることができます。
例えば、PSA(前立腺特異抗原)という前立腺がんの腫瘍マーカー(3)では、数値が4.0を超えると前立腺がんの疑いがあります。
初期の前立腺がんは症状がまったくないことが多く、血液検査をしなければ早期発見はかなり難しいがんです。

アメリカではPSA検診が普及した1992年以降、遠隔転移のある状態でみつかった前立腺がんの罹患率が減少し、前立腺がんによる死亡率も低下しています。
日本においてもPSAが導入される前は、転移がんでみつかる割合が約半数を占めていましたが、PSAが導入された後は約11%まで減少しました。

このように症状がなくても怖い病気が潜んでいることもあるため、定期的な血液検査は非常に重要と言えるでしょう。
(3)がんの種類ごとに作られるタンパク質のこと

 

病気になった時のために

 


基準値から外れた数値は異常値となりますが、必ずしも異常値=病気というわけではありません。異常値だったとしても、人によってはそれが普通の数値であったり、病気とは無関係なこともあります。

例えば、普段からよく運動する人やスポーツ選手では、腎機能を測るクレアチニン(Cre)という数値が高いことがあります。
クレアチニンは、筋肉から代謝される物質であるため、腎臓に問題がなくても筋肉量が多い方は数値が高くなりやすいのです。

このような方が何か体調不良で病院を受診し血液検査を受けたとき、クレアチニンの数値が高かったりするとそれが病気によるものなのか体質によるものなのか、健康な時のデータがないとその判断がつきにくいことがあります。

そのため、普段から自分の血液検査の値がどれくらいなのかを知っておくことで、いざ病気になって血液検査をしたときに、いつもの数値からどれだけ外れているのかをみることで病状の把握がしやすくなります。

 

まとめ

 


今までのお話をまとめると、

・定期的な血液検査は自分の基準値を知ることができる
・病気になる前に、自分の行動を変えるきっかけになる
・病気の予防、早期発見・早期治療につながる
・病気になった時、普段の自分の数値と比べることで病状の把握がしやすくなる

以上のように、定期的な血液検査は様々なメリットがあります。
「今まであまり血液検査を受けてこなかったな」という方も、「受けてはいたけどあまり数値までちゃんとみてなかったな」という方も、これを機に普段の生活から見直してみませんか?

 

著作:野口 哲央(ノグチ テツオ)先生

略歴:昭和大学卒業し現在昭和大学江東豊州病院で勤務中

資格:日本泌尿器科額認定専門医、日本医事認定産業医、da Vinici Certificate(ロボット支援手術施行資格)、厚生労働省指定オンライン診療研修・緊急避妊薬にかかるオンライン診療研修終了

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