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日本の性実情(Ⅱ)

[2023.02.08]
マッチングアプリがもたらした変化 

 

さらに、ここ数年の大きな変化といえば「マッチングアプリの登場」があります。これによって気軽に好みの異性と出会うことができるようになり、セックスの頻度が増えた人も多いかもしれません。自分自身の周りにも、マッチングアプリで出会って結婚したかたが2組もいます。5年前10年前にはなかった出会い方が近年主流になりつつあります。

 

ふだんの自分の生活範囲を超えて異性と出会うことができるのは一見便利に見えます。しかし、見ず知らずのひととも恋人になる可能性、もしくはその日のうちにセックスを行う可能性が高くなっている現代では、性感染症や避妊についてはいままで以上に気を付けなければいけません。

弘前大学と筑波大学の共同研究で、マッチングアプリを使用した経験のある男女では、性病やHIV・AIDSの検査経験が多く、マッチングアプリの利用経験のある女性の13.4%が性病に感染したことがあることがわかっています(1)。

 

また、厚生労働省の統計では梅毒など性感染症は近年増加しています(2)。特に都市部では感染のリスクが高いと考えられます。アプリやインターネットで知り合った異性と性行為を行う場合は感染症対策を行うのはもちろんのこと、不安なことがあれば感染症の検査を行うのも選択肢かと思います。

 

避妊のための選択肢 

 

性教育のなかでも重要な項目が「避妊」ではないかと感じます。なぜならば、知識がないために望まない妊娠が起きてしまう事例はいまでも中高生に起きているからです。JOICEPが国内在住で恋人・パートナーができたことがある5338人(15~64歳)を対象に行った調査では避妊のためにコンドームを使わないセックスを経験した人は4割で、男性の協力が得られなかったことが原因の上位に入っています(3)。

 

このことから女性側から避妊を行うにはアフターピルや低用量ピルなどが適しているかもしれません。欧米での低用量ピルの内服率が30%前後に上るのに対して日本では2019年時点で2.9%であり(4)、医師の診察が必要になることや諸外国よりも値段が高いことが普及しない原因と考えられています。

 

ここ最近、ピルを薬局で販売する議論や妊娠の中絶薬が薬事承認されるなど避妊や妊娠にまつわる国内の動きが活発になっています。他国のようにいつかピルが市販されるときが日本にもくればいいなと思います。もちろん副作用などは十分知ったうえですが・・・。

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。性教育、若者のセックス・性感染症、避妊などいろんな分野について日本の性文化は発展してきていると私は感じます。セックスが身近にあるからこそ、正しい知識を身につけて対応することが現代には必要なのではないでしょうか。

引用
(1)古村健太郎・松井豊 2020マッチングアプリの利用とリスクのある性交経験との関連 地域未来創生センタージャーナル,6, 15-25.
(2
)厚生労働省 2020 性別にみた性感染症(STD) 報告数の年次推移
(3)
公益財団法人ジョイセフ 2021 性と恋愛2021
(4)UN.Population Division. 2019 Contraceptive use by method 2019 : data booklet.

 

著作:新村幸人(ニイムラ ユキト)先生 泌尿器科

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