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少子化問題Ⅰ

[2023.03.03]

少子化問題は、日本の国そのものが消滅しかねない、まさに国家の存亡がかかった最重要課題です。

しかし、残念ながら日本の政治家が本当にこのことの重要性に気がついているとは思えません。

なぜなら、歴代内閣は口を揃えて、少子化対策は『国の最重要課題』と高らかに宣言してきましたが、2007年に少子化担当大臣を設置して以来、2023年までの16年間で、少子化担当大臣は25人!!!も誕生しました。

一人平均1年もやっていない、まさに政治家に『大臣』の肩書を与えるために作ったような政治家に『箔を付ける』ための便利なポストにしか過ぎません。

『世の中の先のことは誰にもわからない』とよく言われますが、一つだけはっきりとわかるものがあります。それは『人口推計』です。

これだけははっきりと予測が可能なのです。

つまり、地震などの予見不能な災害と違って、必ず何十年後にはこうなるということがわかっている事であるにもかかわらず、この体たらくがこの国の現実です。

原因や解決策については、政治的なイデオロギーも関係して、百花繚乱、諸説入り乱れて、まさに収拾がつかない状況です。

ここでは政治的なイデオロギーを排してできるだけデーターに基づいて考察していきたいと思います。

 

少子化の原因として考えられること

  1. 結婚しなくても困らない→非婚化
  2. 経済的な問題
  3. 男性と女性のミスマッチ

 

問題は複雑多岐にわたりますが、一般的に言われているのはだいたいこの3点に集約されるのでは無いでしょうか。

問題が非常に重大且つ複雑なので、何回かに分けて一つ一つ見ていきたいと思います。 

 

  1. 結婚しなくても困らない→非婚化 社会環境的にはその通りだと思います。
  2. 女性の大学進学率は男性の大学進学率を上回り、男女雇用機会均等法により、女性の就業率は飛躍的に向上し、それに伴い、経済力も飛躍的に向上しました。大卒正社員の女性は同期入社の大卒正社員の男性と給料は何も変わりません(パートや非正規は除く)また、男性の方も、コンビニや定食チェーン、牛丼チェーンなど、安くて手軽に食べられる飲食店が至る所にあって、結婚しなくても食事に困ることは無くなってきました。都会で働くサラリーマンなどは、たいていワンルームマンションですから、掃除はルンバ、洗濯は週末にまとめてコインランドリーで乾燥まで一気にやってしまう、というようなライフスタイルが定着し、『奥さんがいなくても困らない』という状況になってきております。この社会環境自体は今後も変わらないでしょうし、これ自体、『悪い事』とは言えませんから、これについては解決策は見当たらないし、見つけなければならないというものでも無いと思います。ただ、最近の研究では、非婚化こそが少子化の最大の原因であるということがわかってきてますから、それだけに一番厄介なのです。

『結婚しなくても困らない社会』は決してそれ自体は『悪いことではない』。しかしながら、日本では『非婚化』と『少子化』はほぼ100パーセント相関関係があることがわかってきております。故に、『悪いことでは無い』けれど、社会を維持するためには『結婚してもらわないと困る』→故に『非婚化』をくい止めなければならない。

コンビニや外食産業を規制する?あり得ないでしょう。女性の社会進出をくい止める?あり得ないでしょう?女性の高学歴化をくい止める?あり得ないでしょう・・・

時代の流れを逆回転させることはできませんから、解決策は唯一、『結婚しなくても困らない』けれど、『結婚すればめちゃくちゃ得をする』という『インセンティブを与える』方向で解決を試みるしかありません。

よく言われるように、『育児手当を増大する』とか、『大学教育まで全額無償化』とか、『子供が一人産まれたら100万円の現金を給付する』とか、さまざまな案が出ておりますが、充実した育児手当も、私立大学の教育費まで無償化を実現しているスウェーデンなどの福祉

大国、教育大国の北欧諸国でさえ、少子化が止まった国は一つもありません。

2020年 合計特殊出生率

  スウェーデン   136位  1,660

  ノルウェー    158位  1,480

  フィンランド   171位  1,370  

  日本       174位  1,340  


です。

ではお手上げなのか?

いいえ、先進国(アメリカを除く)でただ一つだけ少子化を食い止めることに成功した国が1ヵ国だけあります。それはフランスです。

だったら、それを真似をすれば良いだけのことじゃない、って誰でもそう思いますよね。

でもこれがなかなか日本では政治的、イデオロギー的に難しいのです。

少し前までは、日本では、フランスが少子化を食い止められたのは、LGBTをはじめ、同性婚を認め、婚外子も認める自由な婚姻制度が少子化を食い止めた、と盛んに喧伝されていた時期があります。日本もそうするべきだと盛んにテレビなどで学者先生たちが喧伝しておりま

した。しかし、上記の通り、フランス以上にリベラルで、性の解放も進んでいる『北欧諸国』で少子化が食い止められた国は一つもありません。つまり、日本の学者先生がテレビで言っていることは全くの事実無根で、実際は別のことが要因で、少子化を食い止めることに成功

した、ということが今では少しずつですが、一般の国民にもバレてきたからです。



 それは所得税の『N分のN乗』方式の導入です。フランスも日本同様所得税は累進課税の為、所得が増えれば増えるほど税率が高くなり、高額の税金がかけられます。詳細は省きますが、子供が増えれば増えるほど、その人数(子供一人を0.5人と換算する)で所得を割り、その割った金額の税率で所得税がかけられるというものです。(←概略です)

 要するに、子供がたくさんいればいるほど税金が劇的に下がる仕組みです。

これでフランスは2020年の合計特殊出生率を1.83まで回復することに成功しました。

もう答えは出ているのなら、日本もこれと同じことをすれば良いではないか、というでしょうが、なぜこれが長年日本のテレビや新聞ではタブーだったのかということを考えれば、政治的に極めて難しいということがわかると思います。

 フランスの制度は簡単に言えば、事実上の『優生思想』につながりかねないからです。

 考えてみてください。
この制度で得をするのは『高額所得者』だけです。
一般庶民や、ましてや低所得者層は、そもそも支払っている所得税の金額自体が大した金額では無いので、大した恩恵にはなりません。

しかし、何千万円もの所得があるような人にとっては、大変な減税効果があります。

億単位のお金を稼ぐような超富裕層になれば、ものすごい減税効果があります。

低所得階級の家で、劣悪な家庭環境で、満足な教育も受けさせられないような家に、たくさんの子供が産まれるよりも、高所得で、子供に良質な環境を与え、十分な教育を受けさせることができる高所得の家庭に、子供をたくさん育ててもらう方が、国としては非常に良いことです。

さらに、どこの国でもそうですが、高所得者はほとんどが高学歴です。低所得者は低学歴の場合が多いです。どこの国でも学歴と所得は強い相関関係があります。

つまり、IQの高い高学歴の優秀な親にたくさんの子供を作ってもらう方が、低学歴で、低所得の親にたくさんの子供を産んでもらうよりも、国の将来を考えると、優秀な遺伝子を持った子供がたくさん生まれてくる、ということこそが国にとっては非常に大切なことです。

『N分のN乗』制度は事実上、そういう方向性を強く帯びている制度だからです。日本のマスコミが、『フランスが少子化を食い止められたのは『婚外子を認める自由な婚姻制度が整っているからだ』ということは言っても、『N分のN乗方式』のことは報道しなかった理由がこれでお分かりいただけたと思います。

 私が初めに、『政治的なイデオロギーも関係して、百花繚乱、諸説入り乱れて』と書いた意味もお分かりいただけたと思います。

 

次回は②の経済的な問題 について考察していきたいと思います。

 

 続く...

 

 

著作:濱崎 弥生(ハマザキ ヤヨイ)先生

岐阜大学医学部卒業
医学博士号(内分泌代謝)
日本医師会認定産業医
日本保険医学会認定医
社会医医学会専門医協会指導医

 

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