ピルの服用について
ピルって何??飲み方は??
→女性の健やかな生活のためのお薬です。
ピルの種類によって飲み方が違います。
ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンからできている薬で、卵胞ホルモンの含有量によって、中用量ピル、低用量ピル、超低用量ピルに分けられます。
中用量ピルとはどういうお薬なのか
中用量ピルは月経移動のため、例えば試験や旅行など大切な用事と月経がかさならないようにしたいとき一時的に内服するものです。月経予定日の約5日前から中用量ピルを1日1錠内服し、その間は月経がありませんが、内服をやめた2~3日後に月経が来ます。月経を早めるより遅らせるほうが確実のため、この方法を推奨しています。
低用量ピルとはどういうお薬なのか
低用量ピルや超低用量ピルが一般的に「ピル」とイメージされるもので、使用目的は主に月経困難症(月経痛や過多月経)の改善、月経前症候群(PMS)の改善、子宮内膜症の抑制、避妊です。補助的な効果として、大人ニキビ(月経前に顎や口周りにできるニキビ)の改善、卵巣がんや子宮体がんのリスク低下もあります。1日1錠を毎日同じ時間に内服します。内服スケジュールは28日を1周期とし、21日間内服して7日間休薬するものや、24日間内服して4日間休薬する(実際には成分の入っていない偽薬を内服します)ものがあります。どれも休薬2~3日目から月経がはじまるので予定が立てやすいです。ピルは内服し続けることが重要で、3周期目には月経困難症の改善、PMSの改善、大人ニキビの改善効果が表れてきます。
経口緊急避妊薬のいわゆるアフターピルは、卵胞ホルモンは含まれず、黄体ホルモンのみの薬です。低用量ピルを連続2日以上飲み忘れて性交渉をしたり、コンドームのトラブルや性被害など望まない妊娠を避けるために1錠を1回だけ内服するものです。性交渉後なるべく早く内服することが望ましいですが、72時間以内でも避妊効果は出ます。
ピルについて
ピルの副作用は?→内服開始直後は吐き気など。重大な副作用は静脈血栓症。
ピルを飲み始めると最初の1週間程は、20%ほどの割合で吐き気や頭痛の副作用がありますが徐々になくなります。もし2~3か月も副作用が持続する場合は、他のピルに変更してみるのがおすすめです。
重大な副作用として静脈血栓症があります。ピルに含まれる卵胞ホルモンに血栓をつくる作用があるためで、静脈で作られた血栓が原因で命にかかわることもあります。発生頻度は0.1%未満で、ピル内服開始1~2か月目に発生しやすいと言われています。予防としてこまめに水分をとる、長時間同じ姿勢をとるような飛行機の中、デスクワーク中はふくらはぎの運動をすることが大切です。
ピルを飲み忘れたときは?→気づいたときにまず1錠内服し、いつもの時間にも内服します。
例えば、いつも就寝前に内服している方が翌朝気づいた場合、気づいたときに1錠内服します。その日の就寝前はいつも通り1錠内服します。2~3日内服を忘れると月経が来たり避妊効果がなくなります。
ピルを飲めない人はいる?→はい、います。
35歳以上で1日15本タバコを吸う、高度肥満、血栓素因(血が固まりやすい)がある方などです。詳しくは担当医とご相談ください。
ピルを飲むと月経はなくなるの?→なくなりませんが軽くなります。いつ始まるかわかるので、予定が立てやすいです。
内服スケジュールには休薬期間があり、休薬3日目ごろから月経が始まります。継続していくと月経困難症やPMSの改善が見られます。
ピルの避妊効果は?飲み忘れるとどうなる?→ピルの避妊効果は99.8%
コンドームによる避妊効果より高いことが分かっています。2日連続して飲み忘れると避妊効果が落ちると言われています。
ピルを飲んでいて将来妊娠できる?→妊娠したいときに妊娠しやすい状態になっています
子宮内膜症があると卵巣がはれたり排卵がうまくできず不妊症の大きな原因になりますが、ピルには子宮内膜症の抑制、改善効果があります。妊娠を希望したときにピルを中止すると2.3か月で排卵が戻りますので、妊娠しやすい状態になっているといえるでしょう。
ピルは何歳から飲める?→生理が始まった方なら10代でも安全に内服できます
10代での月経困難症は、機能性月経困難症といって病気がなくとも痛みを感じることがあり、この場合も保険適応でピルが処方できます。初潮がみられていれば10代でも安全に使用できます。
ピルは世界、日本ではどのくらい飲まれている?→普及率30%以上の国もあるが、日本は最低レベル。
フランス33.1%、カナダ28.5%、イギリス26.1%、ノルウェー25.6%、アメリカ13.7%と欧米先進国は高く、タイ19.6%、ベトナム10.5%、ミャンマー8.4%など東南アジアが続き、中国2.4%、韓国3.3%となっています。日本は2.9%と先進国では最低レベルです。(1)
(1) 避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)
原因の一つに日本では受診が必要ですが、オンライン診察を行うことでより手軽にピルを処方できます。
最後に
低用量ピルや超低用量ピルは毎日内服するお薬で、内服が中断すると避妊効果がなくなったり、再開時に静脈血栓症のリスクが生じます。また経口緊急避妊薬も性交渉後72時間以内の早めの内服が望ましいです。通院しやすいオンライン診察で、切れ目のない継続した内服治療と、スピーディな診察をお勧めします。
またネットでは診察なしで購入できる個人輸入された安価なピルが売られていますが、信頼性に乏しく安全とは言えません。医師の診察を受けて処方箋で購入するようにしましょう。
またピルの避妊効果が高いからといってコンドームなしで性交渉すると、性感染症のリスクとなります。帯下の違和感や腹痛などあれば、性感染症検査を受けましょう。
著作:浅野 智子(アサノ サトコ)先生
経歴:平成23年医師免許取得 産婦人科医12年目。
大学病院で初期研修後、市中病院や個人病院で様々な経験を積む。